お申込みはこちら動画サンプル

全体会・基調講演


講師:荻上 チキ 氏

メディア論から人権・社会問題を考える

~ここから、そして「未来」へ。私たちの思考の問い直し~

基本的人権の一つである「知る権利」は、表現の自由の重要な一要素とみなされています。

なぜか。「知る権利」がなくして、表現の自由の実質的な確保はできません。

適切なインプットがなければ適切なアウトプットになりませんし、聞き手が制限されていれば発信の達成もままなりません。

「知る権利」は、特に国家権力から、不当に情報の取得を妨げられることがないようにという消極的側面と、政府に対して情報公開請求を行えるという積極的側面があります。政治に関する適切な情報を知らなければ、選挙だけでなく政治発信そのものを誤ってしまう可能性もあります。「知る権利」を確保するためには、メディアが重要な役割を果たします。

そのメディアが適切に発信しているかを批判的に検討するため、メディアリテラシーという概念が作られてから30年以上が経ちました。全てのメディアは、他者によって構成され、他者によって表象されたものです。そのメッセージには、経済、文化、政治、社会的なものが必ず含まれます。そして、人々の認知に対して、常に非意識的な働きかけをも行っています。

メディアリテラシーは00年代頃まで、国家批判(プロパガンダ対策)、企業批判(コマーシャリズム対策)、共同体保護(有害メディア対策)、そしてメディア企業そのものの姿勢への警戒を、それぞれ適切に行うことが推奨されてきました。そのためには、時には小さな市民メディアの役割を重視し、送り手になる訓練を行うことにより、より適切な能力を身につけられると言われてきました。

この前提は今でも重要ですが、他方でウェブ社会になり、誰もが発信者にもなった今、そこかしこで発生する流言や対立に対して、どのように対応するのかというテーマがより切実なものとなっています。そこで役立つのが、数々のメディア研究がもたらしてくれる知見です。

例えばコロナ禍で、「夜の街クラスター」という言葉が連呼されたことと、風俗産業が給付金の対象外とされたことは、無関係ではありません。ステレオタイプ的にフレーミングされた報道は、時に人々の共感性を低下させ、時に攻撃的な意識をも培養します。ステレオタイプは、時としてあるメンバーを、民主主義の同胞ではないとして排除する感覚も育てるのです。

例えばオリンピックは、国家間の集団的友情を育てるためのイベントとされていますが、メディアの報道を分析すると、多くの競技は自民族中心となり、自国選手が敗退したスポーツは放映されにくくなり、自国が負けたオリンピックでは開催国へのイメージが下がります。また、多様性のイベントとされていますが、報道の多くは特に女性選手をジェンダー化して取り扱います。

この講演では、昨今の身近なメディアイベントを例に、メディア機能と民主主義の関係について考えます。メディアの特性を知ることで、私たち自らの思考を問い直していきたいと思います。

※講演内容は一部変更される可能性がありますので、予めご了承下さい。

講師紹介

荻上 チキ 氏(オギウエ チキ)
★プロフィール

特定非営利活動法人(NPO法人)「ストップいじめ!ナビ」代表理事
一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」代表理事
TBSラジオ「荻上チキ・Session」パーソナリティ
YouTube番組「chiki’sTalk」「chiki’sLibrary」

1981(昭和56)年生まれ。兵庫県出身。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。これまで、複数のウェブメディアの運営に携わり、毎日新聞第三者機関「開かれた新聞」委員会委員も担当。
現在、子どもの生命や人権を守るための調査・研究、対策立案、提言及び啓発活動を行う「ストップいじめ!ナビ」、2021年に設立された、社会調査を実施し、個人問題を社会問題として可視化ほか広報を支援する「社会調査支援機構チキラボ」の代表理事をしている。また、2013年放送開始のラジオ「荻上チキ・Session-22(現在荻上チキ・Session)」では、『自由で寛容な社会をつくるため、適切な情報と良質な議論を共有し、一歩先の未来、アップデートされた新しい価値観をリスナーの皆さんと共に作り出』すパーソナリティとして活躍中。ギャラクシー賞大賞、ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞の2冠を受賞している。
その他、社会概念やテーマに沿った解説、書籍紹介・書評などのYouTube番組を配信。評論家として多数のメディア出演、講演を行っている。

★著書

『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか-絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想』(幻冬舎新書)
『未来をつくる権利-社会問題を読み解く6つの講義』(NHKブックス)
『災害支援手帳』(木楽舎)
『いじめを生む教室-子どもを守るために知っておきたいデータと知識』(PHP新書)
『日本の大問題-残酷な日本の未来を変える22の方法』(ダイヤモンド社)
『社会運動の戸惑い:フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』(勁草書房:山口智美外共著)
『みらいめがね それでは息がつまるので』(暮しの手帖社:ヨシタケシンスケ共著)
『ネットと差別扇動 フェイク/ヘイト/部落差別 Talk Session』(解放出版社:谷口真由美外共著) ほか多数

★実行委員会による紹介文

荻上チキ氏は、「自由で寛容な社会をつくるため」、メディア論を中心に、政治経済、社会問題等、幅広く論じながら、積極的にリサーチ活動を行い、問題の実態把握によって個人問題を社会問題として可視化し、そして問題解決に向けての提言・発信等、世の中の仕組みを変えていく活動や、またその活動を後押しされている方です。荻上氏が取り組んでいる問題は、全青司が過去から現在において取り組んできている問題と重なる部分があります。しかし、現行法の枠組みでは十分な解決を図ることができない、また顕在化していない社会問題があり、これらの問題に私たち青年司法書士は「未来」に向けてどのような支援を行うことができるのでしょうか。
基調講演では、人権・社会問題を考えるための「知る権利」にメディアが重要な役割を果たしていることから、メディア論を中心として、コロナ禍等における、また「未来」に向けてのメディア機能と民主主義の関係について、荻上氏の活動、多角的視点から提言を含め語っていただきます。社会に取りこぼされる人々がいない「未来」をつくる。私たち一人ひとりが、そして共に考えつくっていきましょう。

Copyright 2021 ©東京青年司法書士協議会 Allrights reserved